第25回日本マスターズオーケストラキャンプ(MOC25)
- 会場:京都府民ホール アルティ
- 日時:2025年1月11日(土)~13日(月・祝)

J.ラター/弦楽のための組曲 (C)相田憲克
- プログラム
- 課題曲:
1.パッヘルベル:シャコンヌ へ短調(弦楽合奏版)
2.J.ラター:弦楽のための組曲
3.チャイコフスキー:弦楽セレナーデ
- 出演者
- 講師:
深山尚久(ヴァイオリン)
髙山智仁(コントラバス)
- レポート
- 前日の京都市内での初雪が護王神社の片隅にも残り、新春の京都は古都らしい凜とした朝を迎えた。全国26都道府県からアマチュア弦楽器奏者が集い、マスターズオーケストラキャンプ(MOC)は、今年も賑やかに始まった。
講師陣は、マスターズではともに初指導となる深山尚久氏と髙山智仁氏。深山氏には、全国のプロオーケストラのコンマスを歴任してきた経験や、弦楽器の的確なトレーニングに定評がある。JAOフェスで過去2大会においてゲストコンマスとして出演されたこともあり、顔なじみの参加者も多い。髙山氏は日本フィルハーモニーの首席コントラバス奏者として活躍中で、大学講師やコンクール審査委員として後進の育成にも力を注いでいる。MOCにコントラバス講師が入るのは、初期の頃を除けば初めてのこと。今回は、コンサートマスターや首席奏者、次席奏者の役割についても学びたいと臨んだ参加者も多かったのではないだろうか。
初日は開会式のあと、はやる気持ちを抑えてパッヘルベルの「シャコンヌ」から合奏が始まった。緩やかで荘厳なバロック形式の音符が紐解かれてゆく。続いて、時代は300年を隔てた現代のイギリスの作曲家 ジョン・ラターの「弦楽のための組曲」。明るく牧歌的で古民謡を取り入れた旋律はどこか懐かしい。講師から「とにかく楽しんで弾こう」との助言。チャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」は、多くの参加者が繰り返し挑んできた難曲。「じっくりと縦糸横糸を見直して、イメージが変わったねといってもらえる様な演奏を目指そう」との指導があった。
2日目の午前には、二手に分かれて分奏をおこなった。ホールでは中高弦が、ホワイエでは低弦が、それぞれの講師から、楽器の特性を活かした奏法やアンサンブルの基本をじっくりと学んだ。午後からは、ホールにて合奏をおこない、個々の奏者の調べが、次第にひとつの方向に結ばれてゆく様子を体感した。
3日目の午前のリハーサルでは、大きなアンサンブルのなかで楽器の響きを確かめていく様に進めた。「弓をコントロールするため」の6つの要素の解説や、「コンマスの前拍のタイミングに合わせる様に」との助言に参加者は目を輝かせ耳を静かに傾けた。午後からは、新春コンサートとしてキャンプの成果が一般公開され、多くの観客とともに大編成の弦楽オーケストラの魅力を楽しんだ。来場者からは「熱意が伝わる質の高い演奏だった」とたいへん好評であった。
多くの参加者から「指導者や選曲に関して満足した」「これまで明確に出来ていなかった奏法や音楽の楽しみ方がわかった」等のアンケート結果が寄せられ、その満足度がうかがえた。参加者は、それぞれの団体において音楽的、運営的な中心人物である。このキャンプで得られた知見やネットワークを持ち帰り、各団体で活かして欲しい。この日本マスターズオーケストラキャンプの開催は、四半世紀となった。これからも継続していくことの意義は大きく、そして、とても重要だ。

コントラバス講師 髙山智仁先生 (C)相田憲克

コンサートマスター ヴァイオリン講師 深山尚久先生 (C)相田憲克