Activity Report

JAO活動レポート

第24回日本マスターズオーケストラキャンプ(MOC24)

  • 会場:京都市北文化会館
  • 日時:2024年1月6日(土)~8日(月・祝)

ガブリエリ作曲 ピアノとフォルテ8声のソナタCh.175 (C)相田憲克

プログラム
課題曲:
1.ガブリエリ:ピアノとフォルテ8声のソナタCh.175
2.J.S.バッハ:管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068より「アリア」
3.レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア第3組曲
4.ボアモルティエ:5本のフルートのための協奏曲第2番
5.ハイドン:天地創造より「神の御業は成し遂げられた」
6.シュペール:4本のトロンボーンのソナタ
7.シューベルト:バトルソング
8.ハイドン:交響曲第101番ニ長調「時計」≪フルートと弦楽四重奏版≫
出演者
講師:
森 悠子(ヴァイオリン、アンサンブル)
富永 扶(ヴァイオリン)
柳橋泰志(チェロ)
矢野正浩(フルート)
呉 信一(トロンボーン)
レポート
 新型コロナウイルス感染症の5類移行を機に音楽活動も数々の制限が解かれ、失った時間を取り戻すべく大きく前へ動き出した。MOC24は、研修曲目に管楽器を含む楽曲を取り入れたこともあり、23都道府県から管弦楽器奏者81名(初参加25名を含む)が集まった。講師の先生も5名と充実した顔ぶれとなり、新春の古都の華やぎにもつつまれて賑やかに開催された。
 長岡京室内アンサンブル音楽監督の森悠子氏は、今回で5回目の講師をつとめた。同じく長岡京メンバーでヴァイオリンの富永扶氏、チェロの柳橋泰志氏も加わり、ステージの隅々までアシストして様々なアプローチで熱心な指導がなされた。
 コロナの期間を経てヨーロッパではいろいろな変革が進んでいることを伺った。「440Hzで合わせてみましょう」森氏の提案により、まずチューニングを下げた。アメリカではごく普通となっているピッチを体験した。わずか2Hzでも、弦のテンションが緩くなり安心した楽器から奏でられる柔らかな響きが感じられた。
 ルネサンスの時代、神聖な教会に響くトロンボーンの調べ。その仲間に入れてもらえた弦楽器達が神様の楽器であるトロンボーンから音楽の神髄を教えていただくというもの。かくして研修曲目に加わったガブリエリのピアノとフォルテのソナタ。1群は弦楽器、2群はトロンボーンが担当しての競演であった。ガブリエリの指導には、呉信一氏も講師として迎えられた。さらにはトロンボーンアンサンブルも用意され、内容の濃い研修がおこなわれた。
 デジタル時代では「時計」に対するイメージも大きく変わったのだ。ハイドンの第2楽章では柱時計の振り子の動きを意識してそれぞれのリズム感を合わせた。少人数でヨーロッパを演奏旅行ができるようにとザロモンがフルートを伴った室内楽に編曲した版を用いて当時の音楽の再現を試みた。また、フルートで参加した4人のメンバーに講師の矢野正浩氏が加わった5本のフルートのための協奏曲も魅力いっぱいの研修曲目であった。
 「アンサンブルの基本は、カルテットから」という森氏の考えを体得するためカルテット配置にも取り組んだ。ステージ上に配置された16組の四重奏、まるで曼荼羅模様だ。隣り合わせに同じ楽器はなく五感をフルに活用して周りの気配を感じとり呼吸を合わせ演奏する。当初は戸惑っていた参加者も小さなハーモニーが徐々に大きなアンサンブルへと成長していく過程を実感した。
 最終日の新春コンサートでは、各講師から学んだ音楽や技法を思い出しながら、いきいきと自信たっぷりに研修の成果をステージで披露した。ルネサンスからロマン派まで、また管楽器アンサンブルのステージも加わったこともあり、会場は色彩豊かな響きに包まれた。
 課題も山積された三日間であったが、参加者はお互いに切磋琢磨して熱心に音楽づくりに取り組んだ。来場者からも次回を待ち望む声も多く聞かれ、新春のイベントとしてすっかり定着してきたことがうかがわれた。

森悠子先生の熱のこもった指導の様子 後方は富永扶先生・柳橋泰志先生 (C)相田憲克

呉信一先生のアンコール演奏 ロンドンデリーの歌 (C)相田憲克