Activity Report

JAO活動レポート

第23回日本マスターズオーケストラキャンプ(MOC23)

  • 会場:京都府立府民ホール・アルティ
  • 日時:2023年1月7日(土)~9日(月・祝)

初春コンサート (C)相田憲克

プログラム
課題曲:
1.レイフ・ヴォーン・ウィリアムス:トマス・タリスの主題による幻想曲
2.レイフ・ヴォーン・ウィリアムス:コンチェルト・グロッソ
3.ベートーヴェン:交響曲第8番(弦楽合奏版)
出演者
講師:
井野邉大輔(仙台フィルハーモニー管弦楽団 ソロ首席、大阪フィルハーモニー交響楽団 特別契約奏者)
三又治彦(NHK交響楽団ヴァイオリン次席奏者・NPO 法人ハマの JACK 理事長)
レポート
3年ぶりの有観客コンサート

 今回はコロナ禍で延期となったMOC21(2021年1月)と同じメニューで実施した。コロナ禍の制限はあるものの最終日には公開でキャンプの成果を発表した。
 講師の井野邉辺大輔氏はMOCと非常に深い関わりがある。というのはMOC2(2001年かずさアカデミアパーク)をはじめ、これまで4回講師をされた。一方,三又治彦氏はMOCでは初登場であるが,未来の音楽家支援を目的とした「金の卵プロジェクト」で活動されている。両氏ともオーケストラ:ワークショップの評価が高い。今回、お二人はソロヴァイオリンとソロヴィオラも務められたが、その音色は素晴らしく、明快な指導と相まって、参加者を魅了した。
 課題曲はヴォーン・ウィリアムズ(1872-1958)とベートーヴェンであった。
 ヴォーン・ウィリアムズの楽曲はわが国の楽壇では取り上げる機会が少かったが、2021年はヴォーン・ウィリアムズ生誕150年ということもありNHK交響楽団定期で取り上げる等、注目度が増大していた。MOC21ではヴォーン・ウィリアムズを学びたいという動機で申し込んだ参加申も多かった。そして中止が決まったときには、その復活を望む声が多く聞かれた。一方,昨年9月にエリザベス女王2世崩御のニュースが世界を席巻したが、エリザベス女王の戴冠式(1953)を任された作曲家としてヴォーン・ウィリアムズは再び注目を集めた。
 『コンチェルト・グロッソ』はイギリス舞曲からなる組曲である。各パート2名のコンチェルティーノとトゥッティ、さらに完全五度の開放弦で弾くパートを含むユニークな編成の曲である。また『トマス・タリスの主題による幻想曲』はキリスト教の詩篇を主題にした楽曲である。詩編はキリスト教信者にとっては讃美歌でも歌われ誰でも知っている内容であり、参加者には事前にその内容を周知し検討していただいた。編成はステージに第1オーケストラとヴァイオリンとヴィオラのソロを含む弦楽四重奏,客席後方のバルコニーに第2オーケストラを置いた。大聖堂を意識して作曲されたものだが、今回はホールの特性を十分に考慮に入れ検討した配置である。実際に音を出してみるとコントラバスをベースにその上にヴァイオリン,ヴィオラ,チェロと重なり荘厳な響きとなった。また、今回のキャンプでは特に内声部の弾き方が取り上げられたが、その効果もあり曲が仕上がっていくのを感じた。
 ベートーヴェン交響曲第8番(弦楽合奏版)は原曲では管楽器が演奏する部分を弦楽器が分担して受け持つので彩豊かな音楽となった。参加者にとっても慣れ親しんだレパートリーであるため,ヴォーン・ウィリアムズとは全く異なる快活さが垣間見られた。ここでも内声部の弾き方の完成度が確認できた。
 最終日の初春コンサートでは3年ぶりの公開ということもあり、お客様が大変喜こばれ、惜しみない拍手が奏者に送られた。やはりコンサートは演奏者とお客様の相互関係で成り立つことが実感できた。

注意事項はパートごとに共有した。(C)相田憲克

二人の講師 ヴィオラ:井野辺大輔氏 指揮:三又治彦氏 (C)相田憲克